Project
Story #01
JFEスチール 西日本製鉄所(倉敷地区)第7スラブ連続鋳造設備基礎設計プロジェクト
本プロジェクトは、JFEスチールの西日本製鉄所(倉敷地区)にある第7連続鋳造設備の基礎設計業務です。
連続鋳造設備とは、精錬された鋼を連続的に固め鋼片を製造する設備です。今回稼働した当該設備では、大断面スラブを高効率で鋳造可能であり、また最新の制御機構によりスラブ表面・内部品質の大幅な向上を実現できます。
Project Member
Ogo
土木設計部 -1993年 入社
プロジェクトマネージャーとして
全体を統括
Hirasaka
土木設計部 -2007年 キャリア入社
設計主担当として主に主体設備基礎の
設計を実施
Tazoe
土木設計部 -2014年 入社
設計担当として主に付属設備の
設計を実施
Project Flow
ーー本プロジェクトにおける当社土木設計部の役割とフローを教えてください。
Hirasaka:JFEスチール(発注者)から設計を依頼されます。当社土木部では基礎構造を担当するので、まずは現場の状況把握のために「現地調査」を行います。現地調査では、建設予定地周辺の測量と土質状況を把握するためのボーリング調査を行います。調査結果を報告すると、JFEスチールがそれを元に構造物のレイアウト等を検討され、当社に要求資料が届きます。それに従って当社が「基本設計」を行います。JFEスチールより基本設計の承認を得ると、次は「詳細設計」。詳細設計が終わると、その設計図面に基づいて建設が開始されます。
Tazoe:我々の部署では詳細設計にかける時間が大きく、設計計算書と施工図面の作成で業務が完了します。設計では規準書に基づいた設計や必要に応じ高度な解析計算を行い、その結果に基づき安全性と経済性の評価を行ないます。
※高度な解析とは:
一般的な計算手法は梁モデルで線形計算を行いますが、高度解析として振動応答照査、地震応答照査の場合など、FEMによる非線形解析を実施します。
Chapter 01
複雑な設計条件に対して、FEM解析、BIM/CIMを駆使して合理的な設計を行う面白さ。
ーープロジェクトを進めていく際に、大変な点はありましたか?
Ogo:このプロジェクトはかなり色々な提案を求められました。FEM解析や地盤沈下が想定される範囲の安価な施工方法、カルバート(地下トンネル)の提案、クロスレールを採用したことによるレール寿命の設計など多岐に渡っていた点が大変でしたね。
Tazoe:レールが初めて使う種類だったので、当時はクロスレールって何ですか?と聞きました(笑)。レールの寿命をどう設計検討するか、この業務を通じて知りました。
Hirasaka:施工の段階でも地下ピットの壁からの漏水が止まらず、施工業者・施主担当者・設計担当者で漏水対策案(地下水の低下工法、背面地盤の地盤改良)に頭を悩ませながら何とか解決しました。
Tazoe:このプロジェクトではBIM/CIMも活用しています。今では当たり前ですが、当時からCIM対応として3次元構造図の作成を行っていました。3次元図面を作ると干渉の有無が一目瞭然となり設計トラブルを未然に防ぐことができます。
Hirasaka:設計も基礎形状が複雑で設備荷重の組み合わせが多い条件でしたので、従来の解析手法では問題が多いと判断し、FEM解析を行ないました。解析理論や検討方針を手探りで実施し、有識者にも意見を伺って検討結果を算出しました。
FEM 解析モデルのイメージ
短納期への対応にKELPHIL(マニラ)を活用
ーー基礎竣工日の関係から、短納期での提出だったようですね。どう対応したんですか?
Ogo:設計・作図の人員を確保するため、マニラにある当社グループ会社のKELPHILと連携して業務を行いました。KELPHILでは当社で実施している設計の一部や図面作成を行っています。普段、業務の依頼はオンラインでしますが、今回は詳細指示が必要な計算・図面があったので、KELPHILに赴き直接指示を行いました。
Hirasaka:解析もKELPHILに全部をお願いするというよりは、部分的なところをお願いして一緒に協力しながらやってます。日本人が技術指導もしていますが、KELPHILの人は英語が得意なので、英語マニュアルが沢山あるAutocadやRevit等のソフトを使うのが得意だと感じますね。
Tazoe:たしかに3次元計算を行う時のモデル作成とかKELPHILは非常にうまくやる印象がありますね。みなさんの日本語力も高いので助かっています。業務の依頼や指示は9割8分日本語です。(笑)
Chapter 02
プロジェクトを通して得た、あらたな専門技術と自信
ーー本プロジェクトを通して自分がどう成長したと感じましたか?
Ogo:プレゼンテーション能力や説明能力は格段に向上したと感じました。経験と共に説明する相手も変わり、今は経営層の方への説明も必要となりますので、専門用語で学術的に説明するだけでなく、皆が腹落ちする説明するにはどうするかは悩みますね。これは永遠の課題だと思っており、今後も色々な方の報告内容を聞いて勉強しようと思っています。
Hirasaka:FEM解析で試行錯誤することで、新しい解析手法を身に付けました。検討手法が増えて自身の設計結果により自信が持てる様になりました。この設備は年間生産能力が200万トンも向上し、鋼材の安定供給に大きく貢献しているので、その工事に関わったことを誇りに思っています。ちなみに200万トンは、明石海峡大橋の上部工総重量の約10倍に相当するそうで、それを知ってスケールの大きさを感じました。
Tazoe:一連の業務を大きな不具合もなく完遂できたことが自信になりました。実際、以降の担当案件では、自分の提案内容がお客さまにそのまま採用される件数が飛躍的に増えたので、より自信を深めました。
Chapter 03
当社の土木設計では、「高度な技術知識に基づいた提案」や「幅広い種類の設計」が経験できるのが醍醐味
ーー当社の土木設計の面白さはどんなところにあると思いますか?
Ogo:お客さまの要求を待つだけではなく、解析や計算から色々と想定して自分たちからどんどん提案をして業務を進めていけるところですね。より良い提案を続けていく事でお客さまとの信頼関係ができますし、そうするとまた新たな設計提案も採用していただけるようになります。これはプラント設備がわかっている当社だからできる事だと思います。
Hirasaka:当社の土木設計の良さは幅広い分野を経験できることだと思います。普通、コンサル会社に就職したら、たぶん1つの専門業種しかやれなくて、それで学生のみなさんはどれにしようか悩むと思うんです。橋梁だったら橋梁だけとか、上下水道だけという感じで。でも当社だと工場の中ですごく色んな設計の種類があるんですよね。例えば港湾なんて限られたところでしかできないでしょう。大変ですが反面すごくやりがいもあります。
Tazoe:私の場合は、新しい物を作る時にすでに設備が沢山建っている工場の中に設置することになるのですが、それを工夫して設計するのが面白いです。既設の基礎を改造して建設コストをなるべく抑えるために、既設の基礎の改造、使える基礎の流用など色々な検討を行います。それがうまく行った時にはやりがいを感じます。
それぞれの今後の展望・目標とは?
技術士の取得、海外案件、カーボンニュートラルへの貢献。
ーー今後の目標や挑戦したいことを教えてください。
Hirasaka:総合的な判断を下せる技術者となるよう、技術士の資格を取得したいです。当社では民間会社の工場基礎や土木系構造物の設計業務が中心で、工場内では多種の構造物がありますから業務の幅を広げていきたいですね。それから海外案件も担当したいです。
Tazoe:今後、インフラ更新では耐震設計の重要性が高まっていますので、耐震関係の知識を身に付けたいと思っています。大学時代には地震に関する研究をおこなっていましたが、その当時から設計基準も変わっておりますので、最新の技術を習得しようと考えています。それとKELPHILへ英語で業務依頼が出せるように、英語のレベルも上げたいですね。
Ogo:JFEスチールの設計案件では、建設現場が近いので日々変化していく構造物を毎日でも見ることができるのも良いですよね。JFEグループでは、2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、超革新的技術開発への挑戦を行なっています。技術開発された時に、そのプロセス設備の実物大の設計に関わっていきたいですね。皆で社会に貢献できるものを作るっていうのは本当に楽しいです。